ニュースレター No.10 |
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<キレる>子ども と <キレる>心 の 世代間伝達 |
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慶応義塾大学医学部小児科 渡辺 久子 氏 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
子どもたちが“キレる”。“キレて”衝動的に、身近な親、先生、友達を刺す。信じがたい事件の多発に胸がふさがれる。 子どもたちから、子どもらしい由由な時間、空間、仲間が奪われて久しい。諸外国の専門家からは「日本の教育や受験戦争は児童虐待。子どもたちはハッピーなの?」と言われてきた。学力優先の社会で、子どもらはぴーんと気がはりつめている。もっと自由に好きなことをして遊びたい。仲間と切磋琢磨し、しなやかな心を鍛えたい。比較や競争を強いられる子の心は自ずとキレやすくなる。“キレる”子は、“キレやすい”社会の反映ではないだろうか。 ある家庭内暴力の子の父親のエリートサラリーマンが、診察室で”キレて”しまった。「全国4万人の小学生が我慢してクリアしている中学受験。なのにうちの子は不登校、家庭内暴力とは何だ!」子どもは長年、猛勉強でめざした私立中学受験を高熱で失敗し、その直後から暴れている。どなる父親に私は答えた。「全国4万人とは、まるで塾の広告の鸚鵡返しですね。一人息子が思春期の入口で”おれの時間を返してくれ”と叫んでいるのに。せめて父親のあなたが、この子の痛みを感じ、求めている生活を理解してやったら」。父親は反省し、学歴主義をやめた。しかしこのキレる父親を目の当たりにし<欲しがりません、勝つまでは>の戦争中のメンタリティーが、今でも脈々と生きているのを感じた。世間の尺度にとらわれた我慢は、いかに人のその人らしさや心の成熟を阻み、家族や周囲まで巻き込むか。 |
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『母子臨床と世代間伝達』(金剛出版)より転載 |
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